■原因
本来は細菌やウイルスなどの外敵から身を守るための免疫系が何らかの原因で、自分の細胞に対する抗体を作ってしまい、自分で自分を攻撃してしまう自己免疫疾患です。
自己抗体(自分に対する抗体)や免疫複合体(抗原と抗体が反応してできる結合体)ができるのが特徴で、それにより全身の皮膚、関節、血管、腎臓などが侵されてしまうといわれています。
SLE発症の約9割は女性といわれていて、20~30歳代で発症しやすいのが特徴とされています。妊娠可能な年齢の女性に多く発症することから、女性ホルモンがSLEの発症に関与すると考えられています。
また、遺伝子が同じである一卵性の双子の場合、2人そろってSLEを発症する確率は25~60%程度と報告されている為、遺伝的な要因も関与すると考えられています。
更に、海水浴やスキーなどで日光(紫外線)に長時間さらされることが、SLE発症のきっかけとなる場合が多いいわれています。その他には、ウイルス・細菌などの感染症、妊娠・出産、特定の薬剤の使用、ケガや外科手術なども発症の引き金になると考えられています。
■主な症状
全身の様々な臓器に障害を起こしやすいという特徴があります。ただし、現れる症状やその組み合わせ、重症度などは個人によって異なるといわれています。
一般的に、以下のような症状があります。
【全身症状】
発熱、体がだるい、疲れやすい、体重減少、首や脇の下のリンパ節の腫れなどの症状がみられることがあります。
【皮膚や粘膜の症状】
・蝶形紅斑
典型的な症状で、鼻から両頬にかけて現れる蝶のような形をした皮膚の赤みです。かゆみや痛みはない場合が多く、皮膚を触ると少し盛り上がっていることもあります。
・円板状皮疹
円板状の皮疹も特徴的な症状といわれています。皮膚が厚くなり表面がカサカサしたりかさぶたのようになっていることがあります。主に顔や耳、頭部、唇にみられる症状ですが、首や脇の下の広い範囲にもみられることがあります。
・光線過敏症
日光(紫外線)の刺激により紅斑や水ぶくれなどの症状を起こすことがあります。
・レイノー現象
寒冷刺激により手指の色が白→紫→赤へと変化していくことがあります。
【筋肉や関節の症状】
筋肉痛や関節痛はよくみられる症状といわれています。関節の腫れや痛みやこわばりをともなう関節炎が起こる場合がありますが、関節リウマチのように関節破壊がみられることはないとされています。
【腎臓の症状】
特に多いのは、ループス腎炎と呼ばれる腎障害だといわれています。
ループス腎炎によって腎臓の機能が低下すると、最初は自覚症状はありませんが、尿検査で異常がみられるようになります。
進行すると、足や顔などの浮腫、全身倦怠感、食欲不振が現れたり、高血圧や体内の老廃物を排泄することができなくなる腎不全の状態をきたす場合があります。
【肺や心臓の症状】
肺や心臓をおおう膜に炎症が起こる胸膜炎や心外膜炎がみられることがあります。
症状としては、胸の痛みや動悸、息切れ、息苦しさなどが挙げられます。
稀に間質性肺炎や肺胞出血、心筋炎等の重い臓器障害が起こる場合もあるため、咳や発熱など風邪のような症状にも注意が必要です。
【血液の異常】
貧血がよくみられ、疲れやすい、めまいや動悸、息切れなどの症状が出ることがあります。また、白血球のリンパ球が減少することで感染症にかかりやすくなったり、血液を凝固させる働きのある血小板が減少することで出血しやすくなる場合もあります。
【神経の症状】
中枢神経や末梢神経に様々な障害が起こり、けいれん、頭痛、手足の痺れ、筋力低下などの他に、不安感、抑うつ状態、注意力や記憶力の低下などの認知障害、幻覚や妄想や意識障害などの精神症状がみられることがあります。
また、重症の場合はてんかん発作や脳梗塞などを引き起こすこともあります。
【その他合併】
ステロイド薬の長期使用によるステロイド性骨粗鬆症、白内障や緑内障、感染症、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などの病気を合併しやすくなるといわれています。
■診断方法
①問診・視診・触診
問診では、現病歴や既往歴、家族で膠原病などにかかっている人がいるか、合併症やアレルギーの有無、妊娠・出産の有無などについて聞かれるのが一般的です。
視診や触診では、皮膚や粘膜、関節などの全身の状態を調べて、SLEを疑う症状の有無を確認するのが一般的です。
②血液検査
・抗核抗体検査によって免疫の異常の有無を確認します。
・血球の成分である赤血球、白血球や血小板の数が減少していないかを確認します。
・腎機能検査、肝機能検査、血糖、コレステロール等の数値で臓器に異常が起きていないかを調べます。特に腎機能に注意が必要な為、クレアチニンや尿素窒素(BUN)など腎臓の働きの指標となる成分を調べます。
③尿検査
腎臓の機能をチェックする目的で、尿タンパク検査と尿中の細胞成分を調べるための尿沈渣検査などが行われます。
④生理学的検査
臓器障害の程度を詳しく調べる目的で、心電図検査や筋肉の状態を調べる筋電図、中枢神経の症状を調べる脳波などの検査を行うことがあります。
⑤画像検査
肺や心臓の障害が起きていないかを調べるために、胸部X線検査が行われます。必要に応じて肺や心臓、腎臓、頭部(脳)、関節、消化器などに対して、超音波検査、CT検査やMRI検査などの画像検査が行われる場合もあります。
⑥生検による病理組織検査
体の組織の一部を採取して、顕微鏡で組織や細胞の状態を調べる検査が行われることがあります。
腎臓の生検では、その組織の状態を調べて、ループス腎炎の炎症の程度や障害のタイプを判定し、治療方針の決定につなげます。
SLEの診断は上記の検査と併せて、米国リウマチ学会(ACR)の分類基準(1997年改訂)とこれをさらに改訂したSLICC(Systemic Lupus International Collaborating Clinics)分類基準のいずれかが用いられるのが一般的です。
■治療方法など
自分自身に対する免疫を抑えるため、免疫抑制効果のある薬を使う治療が一般的です。
【副腎皮質ステロイド】
①ステロイドパルス療法
症状が重篤な時に使われることがあります。一般的には3日間、副腎皮質ステロイドを点滴で大量に投与します。
口から飲むより早く効き、効果も高いといわれています。3日間の使用のため、この間の副作用も比較的少ないとされています。その後は口からの服用に切り替えます。
②免疫調整薬/免疫抑制薬
副腎皮質ステロイドの効果が不十分な場合や重症の場合、早めの減量を必要とする場合などに免疫抑制薬が使用されます。
③血栓に対する治療
血栓を作りやすい抗リン脂質抗体症候群を合併している場合やステロイド大量投与中の場合には小児用バファリン、ワーファリンなどの血液をサラサラにする薬を併用することで、血栓の予防が必要になることがあります。
【日常生活の注意点】
SLEの増悪因子と考えられる紫外線や感染症を避け、予防することが大切だとわれています。
長時間の直射日光は避け、帽子や長袖の服・日焼け止めで紫外線対策を行ったり、マスクの着用や手洗い・うがいなどの一般的な感染予防も大切です。
また、持続的なストレスや睡眠不足も病気の悪化につながる可能性があるため、十分に休息をとることも重要だと考えられています。
加えて適度な運動は、ストレスの解消、肥満や生活習慣病、骨粗鬆症の予防にもなる為、効果的だといわれています。
■お勧め運動メニュー
※本記事はこちらの資料を参考に作成しています。