■原因
何かしらの原因で脳と脊髄の表面(クモ膜下腔)に存在する脳脊髄液の循環・吸収が悪くなると頭蓋内に過剰に髄液が溜まり、主に脳室が拡大します。これが原因で歩行障害・認知症・尿失禁などの症状が現れるものが水頭症とされています。
正常圧水頭症は主に2つのタイプに分類されています。
【特発性正常圧水頭症(iNPH)】
原因は不明で最も多いと言われています。主に高齢者に起こり、70~80歳代で多く発症するとされています。
【続発性正常圧水頭症】
くも膜下出血や髄膜炎などを発症した数か月後にその後遺症として起こるとされています。
■主な症状
歩行障害・認知障害・排尿障害の3つで、3徴候と呼ばれています。
歩行障害(3徴候の中で最も多くみられる症状で最初に出ることが多い)
・小刻み歩行
・開脚歩行(少し足が開き気味で歩く)
・すり足歩行
・不安定な歩行(特に方向転換のとき)
・転倒しやすい
・第一歩が出ない
・突進現象(うまく止まることができない)
認知障害
・集中力、意欲・自発性が低下
・物忘れが次第に強くなる
排尿障害
・尿失禁
・頻尿
・尿意切迫
■診断方法
一般的な検査には、以下のようなものがあります。
①問診
歩行障害や認知障害、排尿障害の有無や程度を確認し、簡単な認知検査や歩行の評価を行います。
②頭部CT
脳室の拡がり具合を確認する検査
③頭部MRI
脳腫瘍など水頭症の原因を探す検査
④髄液検査(腰椎穿刺)
腰椎穿刺を行って、髄圧を調べる検査
⑤タップテスト(髄液排除試験)
背骨から、比較的細い針で髄液を抜く(腰椎穿刺)検査です。この検査で症状が改善した場合、正常圧水頭症が疑われます。症状の改善を評価するために、前後で歩行を比較します。
■治療方法など
溜まっている脳脊髄液を手術によって排出することが主な治療法とされています。
【VP(脳室-腹腔)シャント術】
頭(脳室)と腹腔を、皮膚の下に通したシリコンでできた管で連結し、髄液をおなかの中で持続的に吸収させる手術です。
【LP(腰椎-腹腔)シャント術】
腰(腰椎くも膜下腔)と腹腔を、皮膚の下に通したシリコンでできた管で連結し、髄液をおなかの中で持続的に吸収させる手術です。
【VA(脳室-心房)シャント術】
頭(脳室)と右心房を、皮膚の下に通したシリコンでできた管で連結し、髄液を血液へ持続的に吸収させる手術です。最近はほとんど行われていませんが、腹膜炎の既往や、腹部の手術を受けたことがあり腹腔内での癒着が懸念されている人など、他の術式ができない場合に選択されることがあります。
■お勧め運動メニュー
※本記事はこちらの資料を参考に作成しています。