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病気辞典

全身性強皮症

■原因

 

原因は複雑で、その病態は十分には解明されていません。しかし①免疫異常②線維化③血管障害の3つの異常と深い関連性があることがわかってきました。
その相互関係や病因については不明のままだといわれています。
 
硬化の程度や進行の経過によって大きく2つに分類されています。
 

【びまん皮膚硬化型全身性強皮症】
全身に発症し、発症より5~6年以内は進行することが多いと考えられています。
自己抗体として抗Scl-70抗体(抗トポイソメラーゼI抗体)や抗RNAポリメラーゼⅢ抗体が検出される場合に多いことがわかっています。
 
【限局皮膚硬化型全身性強皮症】
皮膚の範囲に現局することが多く、進行はほとんどないか緩やかだといわれています。
自己抗体として抗セントロメア抗体や抗U1-RNP抗体が検出される場合に多いことがわかっています。

 

 

■主な症状

 
【皮膚の症状】
①皮膚硬化
代表的な皮膚症状だといわれています。多くの場合、左右同時に手や足の指先から皮膚がだんだんと硬くなり、体の中心に向かって進んでいくといわれています。皮膚が硬くなるスピードや範囲は、個人差があります。
 
皮膚硬化によって、指の関節が曲がったまま伸ばしづらくなる手指屈曲拘縮が起きたり、顔の皮膚が硬くなって、口が開きづらくなる開口障害や口の周りにしわが出来る、顔の表情が作りづらくなる仮面様顔貌になる場合もあります。

 
②レイノー症状
血管の障害によって、寒冷刺激や緊張した時に手指が蒼白~紫色になる症状で、冬に多くみられる場合があります。半数以上の方で最初に現れる症状だといわれています。
 

③爪上皮出血点
血管の障害によって、爪のつけ根(甘皮) に複数の内出血が現れることがあります。
 

④毛細血管の拡張
血管の障害によって、手のひらや唇の内側などに毛細血管の赤い斑点がみられる場合があります。
 

④指先や指関節の陥凹性瘢痕や潰瘍
血管の障害によって、小さくへこんだ傷跡のような瘢痕や潰瘍ができることがあります。
 

【肺の症状】
①間質性肺疾患
全身性強皮症の半数以上で起こる症状の一つといわれています。
肺に炎症が起こり、肺の間質が厚く硬くなって線維化し、肺が膨らみにくくなったり、ガス交換が上手く出来なくなることで、空咳や労作時の息切れなどが起きる場合があります。
進行すると、着替えや入浴などの日常の軽い動作での息切れが起こることもあります。
 

②肺高血圧症
肺に血液を送る肺動脈が狭くなったり、硬くなることで肺動脈の血圧が高くなることがあります。
初期段階では、日常生活において自覚症状はないといわれていますが、進行し肺動脈の血流が悪い状態が続くと、体に十分な酸素を運べなくなるため息切れや疲労感などの症状が出てきます。
 

さらに進行すると、右心不全になる場合があります。息切れや疲労感などの症状は重症となり、次第に、日常生活に大きく支障をきたすようになっていくといわれています。
 

【消化器の症状】
①胃食道逆流症
食道が硬くなると、食べ物が喉につかえたり、飲み込みづらくなることがあります。また、胃の内容物が食道に逆流するすると、胸やけや吐き気、胸痛を感じる場合もあります。
 

②下痢や便秘
腸が硬くなり蠕動運動が低下すると慢性的に起こることがあります。
 

【腎臓の症状】
①腎クリーゼ
腎臓の血管が障害されると、重い腎不全として発症することがあります。
頻度はそれほど高くありませんが、突然発症するといわれています。頭痛や頭部の不快感、めまい、尿が出なくなるなどの症状が急に現れるといわれています。
 

【その他】
手指の屈曲拘縮、関節炎、心電図異常、ミオパチーなどが起きることがあります。

 
 

■診断方法

 
一般的に、以下のような検査が行われています。
【皮膚や血管の検査】
皮膚の硬さは病気の進み具合をよく現すため、医師が皮膚をつまみ、皮膚の硬さによって0~3の4段階のスコアに分けて状態を把握します。
また、手や足の指先などを観察して、陥凹性瘢痕や潰瘍などの有無や状態を確認します。
 
【血液検査】
炎症の状態やそれぞれの臓器の状態、自己抗体を調べるために行われています。

 
【肺の検査】
代表的な肺の症状である間質性肺炎の早期発見や状態の把握のために行われています。
①聴診
背中に聴診器をあて、息を吸ったときの異常な呼吸音(バチバチ、バリバリなどの硬い音)を調べます。
 
②胸部X線検査
肺や心臓の異常を調べます。肺が線維化して硬くなった部分は、白い影として映ることがあります。
 
③呼吸機能検査
息を吸ったり吐いたりしたときの空気の量や空気の動きを調べる検査で、呼吸機能の低下を評価します。一般的に間質性肺炎では、肺が硬くなりふくらみにくくなるため、肺活量が低下します。
 
④HRCT(高分解能CT)検査
肺のわずかな変化をみつけることができる検査で、どこでどれくらい進行しているのを調べます。肺の硬くなった部分が白い影としてみえたり、肺が膨らみにくくなっているなどの状態を観察します。
 
⑤6分間歩行試験
体を動かしている状態での呼吸の機能を評価します。6分間、平地を歩いて、肺や心臓の病気が日常生活にどの程度障害を及ぼしているかを調べる検査です。
 
⑥肺生検
肺の組織の一部を採取して、組織に起こっている変化を調べる検査です。
 
【その他の検査】
どの臓器にいつ病変があらわれるかを予測することが難しいため、病状にあわせて定期に必要な検査が行われます。

※難病認定には、厚生労働省研究班が作成した全身性強皮症の診断基準が用いられます。

 

 

■治療方法など

 

一般的に、全身性強皮症は長期にわたって症状が続き、現在でも完治できる治療法はないといわれています。
治療法には、痛みや胸やけなどの症状を和らげるための治療と、皮膚や肺などが硬くなるのを抑えて病気の進行を遅らせるための治療があり、病気をコントロールしながら付き合っていく必要があると考えられています。
 

【薬物療法】
①免疫抑制薬
免疫に関係する細胞の働きを抑え、皮膚や肺が硬くなるのを抑える働きがあるとされています。副作用として、感染症にかかりやすくなる、赤血球や白血球などの減少、不妊、出血性膀胱炎などがあります。
 

②副腎皮質ステロイド薬
炎症を抑える作用と免疫の働きを抑える作用があり、倦怠感や皮膚のむくみを軽減する働きがあるとされています。副作用として、感染症にかかりやすくなる、骨粗鬆症、ムーンフェイス(顔が丸くふくれる)、体重増加、消化管潰瘍、骨の壊死、高血圧や糖尿病、精神的な不安定、白内障や緑内障などがあります。
 

③症状を和らげるための薬
レイノー現象や指先の潰瘍に対しては血管拡張剤、胃の内容物の逆流による胸やけや胸痛には胃酸分泌抑制剤などが使用されることがあります。

 

 

■お勧め運動メニュー

 

 

 

 
 
 
 
※本記事はこちらの資料を参考に作成しています。

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