■原因
脳の幹にあたる黒質という部分の神経細胞が次第に減少し、その神経が働くときに使うドパミンという物質が減ることによって起こる病気といわれています。
ドパミンは、脳において、運動の仕組みを調節するような働きを担っているため、ドパミンが減ることにより体が動きにくくなったり、ふるえが起こりやすくなったりします。
ドパミンは年齢とともに自然に減っていきますが、パーキンソン病の患者さんの場合は、健康な人に比べてより速いスピードで減って行くといわれています。
パーキンソン病の発症にはドパミンの中で、αシヌクレインというタンパク質が凝集することに関連していると考えられています。
一部のパーキンソン病は遺伝子が原因で発症することがわかっていますが、多くは原因不明で遺伝することはないとされています。
■主な症状
パーキンソン病の症状には、運動症状と非運動症状とがあります。
【運動症状】
パーキンソン病の発症初期からみられる特徴的な症状です。以下の4つの症状は4大症状(パーキソニズム)と呼ばれています。
①無動
動きが素早くできない、歩くときに足が出にくくなる、話し方に抑揚がなくなり、声が小さくなる等があります。
②筋強剛
肩、膝、指などの筋肉がかたくなって、スムーズに動かしにくかったり、痛みを感じることがあります。顔の筋肉がこわばり、無表情に感じられることもあります。
③静止時振戦
片方の手や足のふるえから始まることが多く、睡眠中はふるえが治まりますが、目が覚めるとふるえが始まることもあります。
④姿勢反射障害
屈曲姿勢、小股・突進歩行などで体のバランスが取りにくくなったりと転倒リスクが高まります。
【非運動症状】運動症状の前に現れるものがあります。
①自律神経症状
便秘や頻尿、起立性低血圧・食後のめまいや失神、発汗、むくみ、冷え、性機能障害などが挙げられます。
②認知障害
遂行機能障害、物忘れがひどいなどの認知症症状などがあります。
③精神症状
うつ・不安などの症状や、身の回りのことへの関心がうすれてしまったり、 顔を洗う、 着替える、といったことをする気力がなくなったりする状態、幻覚や錯覚、妄想などの症状などがあります。
④睡眠障害
不眠や日中の眠気などがあることもあります。
⑤疲労や疼痛、体重減少
疲れやすい、肩や腰の痛みや手足の筋肉痛や痺れ、体重の減少などがあります。
■診断方法
4大兆候はパーキンソン病の特徴的な運動症状ですが、似た症状はパーキンソン病以外の病気でも現れることがあります。また、パーキンソン病を確実に診断できる検査法も現在のところはないといわれています。
一般的に、下記の項目を満たした場合パーキンソン病と診断されています。
①4大症状(パーキンソニズム)がある。
②脳CT又はMRIに特異的異常(多発脳梗塞、被殻萎縮、脳幹萎縮、著明な脳室拡大など他の原因)によるパーキンソニズムがない、薬物・毒物への曝露がない。
③抗パーキンソン病薬にてパーキンソニズムに改善がみられる。
最近、新しい検査法が開発され、診断の補助的な手段として注目されています。
①MIBG心筋シンチグラフィー
MIBGという物質を注射して心臓の交感神経の働きを画像で調べます。パーキンソン病のでは、MIBGの心筋へのとりこみが低下していることが知られており、その様子を観察します。
②DaTスキャン
放射線を出す検査薬を注射して、脳内でドパミンの働きに関係するドパミントランスポーター(DAT)を画像で調べます。パーキンソン病ではドパミントランスポーター(DAT)が少なかったり、左右で非対称になっていたりするとされています。
■治療方法など
治療法の中でも、中心となるのが薬物治療となっています。パーキンソン病は脳のドパミン量が低下しているため、それを補うための治療薬が必要となります。薬剤は1種類の薬を長期間服用するのではなく、2~3種類を組み合わせて使用するのが特徴です。
①L-ドパ
脳内で不足しているドパミンを直接補充する薬剤です。パーキンソン病の薬物治療において中心となる薬といわれています。長期間服用すると効果が出にくくなったり、自分の意思とは関係なく身体が動く(ジスキネジア)などの症状が出ることもあるといわれています。
②ドパミンアゴニスト(ドパミン受容体刺激薬)
少なくなったドパミンの代わりに脳内のドパミン受容体に結合し、働きを補う薬剤です。
③COMT阻害薬
L-ドパを分解する酵素であるCOMTの働きを阻害し、脳内に入るL-ドパ量を増やすための薬です。
④抗コリン薬
ドパミンの減少により、過剰となっているアセチルコリンの働きを抑制する薬です。振戦が改善しない場合などに、他の薬剤と併用して用いられます。
長期間の薬物治療で効果が出にくくなったり、ジスキネジア(不随意運動)が見られるようになった場合には、手術治療を行うこともあります。症状を完治させるためではなく、薬剤療法と併用し症状を改善していく目的で行われています。
■お勧め運動メニュー
※本記事はこちらの資料を参考に作成しています。